- 結論先出し:2026年10月から3つの新制度・5つの準備
- 制度①「3割特例」とは何か(個人限定・2027-2028年の2年間)
- 概要
- 対象になる条件
- 2割特例との違い
- 2割特例終了と3割特例移行のタイムライン(暦年で整理)
- 制度②「70%控除」とは何か(5段階に細分化された経過措置)
- 経過措置のスケジュール(令和8年改正後)
- 個人事業主への実務影響(買い手目線で整理)
- 重要な制限事項:年間控除上限の縮小
- 制度③「電帳法×青色申告75万円控除」(2027年分申告から)
- 概要
- 「優良な電子帳簿」とは
- 実務インパクト
- 個人事業主が2026年10月までにやる5つの準備
- 準備1:自分が3割特例の対象かを確認する
- 準備2:簡易課税制度の届出を検討する
- 準備3:電帳法×AI会計ソフトの対応を整える
- 準備4:取引先への影響(70%控除)を踏まえて請求書を再点検
- 準備5:青色申告75万円控除を視野に入れた帳簿運用
- AI会計ソフトで5つの準備を乗り切る具体手順
- 手順1:マネフォAI確定申告β版で領収書整理を自動化
- 手順2:マネフォクラウド確定申告(本体)で簡易課税届出を管理
- 手順3:請求書発行をクラウドソフトに統一
- 手順4:受発注の経理を一気通貫で見直す
- 手順5:迷ったら税理士に相談
- もっと深く学びたい人へ ─ 簿記・確定申告の体系学習
- まとめ ─ 2026年10月までが、個人事業主の準備期間
- 次のアクション(3ステップ)
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5月の夜、自宅のリビング。請求書ソフトを開いたまま、フリーランスの個人事業主がスマホで検索する。「インボイス 2割特例 終了」。検索結果の1ページ目に並ぶ税理士サイトを読んでも、結局自分は2026年10月以降どうすればよいのかが分からない。
実は2026年10月から、個人事業主の税制は3つの大きな変化が同時に起きる。第1に「2割特例」が終わり個人限定の「3割特例」が始まる。第2に買い手側の仕入税額控除が80%→70%→50%→30%→0%の5段階に細分化される。第3に2027年分申告から青色申告の最大控除額が65万円→75万円に拡大される(電子帳簿要件あり)。
いずれも国税庁公式情報および令和8年度税制改正で確定済みだ。 ところが、これら3つを横串で整理して「個人事業主が今やる5つの準備」を提示している記事は少ない。本記事では3制度の要点と、今すぐやるべき準備、AI会計ソフトで乗り切る具体手順までを1本に整理した。
※本記事は2026年5月24日時点の公開情報をもとに作成しています。税務判断には個別事情が関わるため、最終的には税理士または所轄税務署にご確認ください。
結論先出し:2026年10月から3つの新制度・5つの準備
まず全体像を1枚で押さえる。
| 制度 | 内容 | いつから | 誰が対象 |
|---|---|---|---|
| 3割特例 | 納税額=売上税額の30% | 2027年分申告(令和9年) | 個人事業主・基準期間売上1,000万円以下 |
| 70%控除(経過措置) | 免税事業者からの仕入の70%を控除可 | 2026年10月1日 | 課税事業者(買い手側) |
| 青色申告75万円控除 | 最大控除額65万円→75万円 | 2027年分申告 | 青色申告者・優良な電子帳簿が必須 |
そして個人事業主が2026年10月までにやる5つの準備は次の通りだ。
- 自分が「3割特例の対象か」を年商と基準期間で確認する
- 簡易課税制度の届出を検討する(フリーランス協会も推奨)
- 電子帳簿保存法の対応をAI会計ソフトで整える
- 取引先(買い手)への影響(70%控除)を見越して請求書フォーマットを再点検する
- 75万円控除を視野に、青色申告の優良電子帳簿要件を満たす準備をする
ここから先は、3制度の中身と5つの準備を、順番に深掘りしていく。
制度①「3割特例」とは何か(個人限定・2027-2028年の2年間)
概要
3割特例は、インボイス制度の負担軽減措置の延長として、令和8年度税制改正で創設された新制度だ(国税庁公式PDF)。
要点は3つに尽きる。
- 対象は個人事業主のみ(法人は対象外)
- 適用期間は令和9年分・令和10年分(2027年分・2028年分)の2年間
- 納税額は売上にかかる消費税の30%
対象になる条件
国税庁公式PDFによれば、3割特例の適用条件は以下のとおりだ。
- 個人事業主であること
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下
- 確定申告書に「3割特例適用の付記」を行うこと
なお「基準期間」とは、原則として「前々年」を指す。2027年分の確定申告なら、2025年の課税売上高で判断する仕組みだ。
2割特例との違い
| 項目 | 2割特例(現行) | 3割特例(新設) |
|---|---|---|
| 納税額 | 売上税額の20% | 売上税額の30% |
| 法人 | 対象 | 対象外 |
| 適用期間 | 〜2026年9月30日 | 2027年分・2028年分 |
| 確定申告書 | チェック欄 | 3割特例適用の付記が必要 |
2割特例終了と3割特例移行のタイムライン(暦年で整理)
個人事業主の課税期間は1月1日〜12月31日。これを踏まえて暦年ベースで時系列を整理する。
| 暦年 | 個人事業主の取引 | 適用される制度 | 確定申告のタイミング |
|---|---|---|---|
| 2026年1月〜2026年12月 | 全期間 | 2割特例 | 2027年3月(2026年分申告) |
| 2027年1月〜2027年12月 | 全期間 | 3割特例 | 2028年3月(2027年分申告) |
| 2028年1月〜2028年12月 | 全期間 | 3割特例 | 2029年3月(2028年分申告) |
| 2029年1月以降 | 全期間 | 本則課税または簡易課税 | 順次 |
つまり個人事業主は、暦年単位で「2026年=2割/2027年・2028年=3割/2029年以降=本則 or 簡易」と切り替わる。2026年9月30日という日付は法令上の終了基準だが、実務上は「2026年分の確定申告は2割特例で完結し、2027年取引から3割特例に切り替わる」と理解しておけばよい。
2割特例の制度概要は国税庁の公式パンフレットで確認できる。
制度②「70%控除」とは何か(5段階に細分化された経過措置)
ここは買い手側(=発注元企業)の話だが、フリーランス・個人事業主にとっても取引継続への影響として理解しておきたい。
経過措置のスケジュール(令和8年改正後)
| 期間 | 免税事業者からの仕入の控除割合 |
|---|---|
| 〜2026年9月30日 | 80%(現行) |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70%(新設) |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50%(2年延長) |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30%(新設) |
| 2031年10月1日以降 | 0%(控除不可) |
当初は80%→50%への1段降りだったが、令和8年改正で5段階に細分化された。完全廃止も2029年予定から2031年に2年延期されている。
個人事業主への実務影響(買い手目線で整理)
本記事の読者(免税→課税事業者に移行済の個人事業主)にとって、70%控除は「自分の取引先(買い手)が直面する話」として理解する論点だ。
整理すると次の2方向の影響がある。
①あなた自身が買い手のとき:もしあなたが、まだインボイス登録していない免税事業者(フリーランス・外注先など)に発注している場合、その支払の控除割合が80%→70%に下がる。発注先の見直しか、価格交渉の余地が出る。
②あなたが将来登録を取り消して免税に戻る場合:あなたから仕入れる課税事業者は控除割合が70%に下がる。取引価格や条件の見直し圧力が来る可能性が高い。
いずれにせよ、取引先との関係性を5月の今から整理しておくのが現実的だ。
重要な制限事項:年間控除上限の縮小
2026年10月から、1免税事業者あたりの年間控除上限が10億円→1億円に大幅引下げになる(フリーランス協会の解説)。大口取引のあるフリーランスは特に影響を受けるため、契約金額の規模も再点検しておきたい。
制度③「電帳法×青色申告75万円控除」(2027年分申告から)
概要
2026年1月から電子帳簿保存法は完全適用が継続している。電子取引で受け取った書類は、原則として電子データのまま保存する義務がある(国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイト)。
加えて、令和8年税制改正で次の変更が確定した。
- 青色申告の最大控除額が65万円→75万円に拡大(2027年分申告から)
- 75万円控除を受けるには「優良な電子帳簿」での保存が必須要件
「優良な電子帳簿」とは
ざっくり言えば、訂正・削除履歴を残せる会計ソフトで仕訳を入力し、検索機能を備えた状態で保存することだ。マネーフォワード クラウド確定申告やfreeeなどの主要クラウド会計ソフトは、いずれも優良電子帳簿要件に対応した運用設定が可能になっている。
実務インパクト
所得が330万円超の所得税率20%帯で考えると、控除額が10万円増えると所得税が2万円・住民税が1万円ほど軽くなる。年単位で見て3万円前後の差は、個人事業主にとって決して小さくない。
ただし「優良な電子帳簿」要件を満たすには、紙の領収書を撮影してアップロードするだけでは不十分だ。会計ソフトの選択と運用設定が肝になる。
個人事業主が2026年10月までにやる5つの準備
ここから本題だ。3制度を踏まえて、今から10月までに進めるべき準備を5つに絞った。
準備1:自分が3割特例の対象かを確認する
まず以下の3点を確認する。
- 2027年分の基準期間(2025年)の課税売上高は1,000万円以下か
- 課税事業者として継続するか(インボイス発行事業者の登録を維持するか)
- 法人化の予定はないか(法人化すると3割特例は使えない)
すべて該当するなら、3割特例は強力な味方になる。
準備2:簡易課税制度の届出を検討する
フリーランス協会は「3割特例の終了(2029年以降)を視野に、今すぐにでもやっておきたいのが簡易課税制度の届出」と推奨している。
簡易課税制度とは、業種ごとに定められた「みなし仕入率」で消費税を計算する制度のこと。事業者の負担軽減策のひとつだ。みなし仕入率は業種により次の通り定められている。
| 区分 | 業種 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業 | 90% |
| 第2種 | 小売業・農林漁業(飲食料品) | 80% |
| 第3種 | 製造業・建設業・農林漁業(飲食料品以外) | 70% |
| 第4種 | 第1〜3種・5〜6種以外(飲食店業など) | 60% |
| 第5種 | サービス業・金融業・保険業 | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% |
たとえばサービス業のフリーランス(第5種・みなし仕入率50%)なら、納税額は「売上税額×(1-0.5)=売上税額の50%」となる。3割特例(30%)の方が有利という比較ができる。
届出を出しておくと、毎年の確定申告で「3割特例」「簡易課税」「本則課税」のうち有利な方式を選べる柔軟性が確保できる。届出のタイミングは原則として「適用したい課税期間の初日の前日まで」だが、特例があるため税理士確認をおすすめする。
準備3:電帳法×AI会計ソフトの対応を整える
電子帳簿保存法は2024年1月から本格適用、2026年も継続。電子取引データは電子のまま保存が必須だ。
AI会計ソフトの活用ステップは次の通り。
- メール添付のPDF請求書を、AI仕訳機能つき会計ソフトで取込
- 取引明細にカテゴリを自動分類させる
- 訂正・削除履歴が残る環境で保存(=優良電子帳簿要件)
この一連の流れを実機で検証したのがマネーフォワード AI確定申告β版実機レビューだ。レシート9枚で約89%の精度を確認しており、個人事業主の現場で十分使えるレベルにある。
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準備4:取引先への影響(70%控除)を踏まえて請求書を再点検
買い手側の控除割合が80%→70%に下がる。あなたが免税事業者なら、取引先の経理担当が「来年の請求書フォーマットを変えてほしい」と要望してくる可能性がある。
事前に以下を整理しておくと交渉がスムーズだ。
- 自社が課税事業者か免税事業者か
- 適格請求書発行事業者登録番号の取得状況
- 主要取引先ごとの年間取引額(年間1億円超の取引先がある場合は特に注意)
準備5:青色申告75万円控除を視野に入れた帳簿運用
2027年分申告から青色申告控除が75万円に拡大されるが、要件は「優良な電子帳簿」での保存。次の3点をクリアすればよい。
- 会計ソフトでの仕訳入力(紙の帳簿は不可)
- 訂正・削除履歴が残る形式
- 検索機能を備えた電子保存
これらを満たすクラウド会計ソフトを今のうちに導入し、運用に慣れておく。2026年中の取引から優良電子帳簿で記録しておけば、2027年分の確定申告で75万円控除をスムーズに受けられる。
AI会計ソフトで5つの準備を乗り切る具体手順
「やることが多くて手が回らない」と感じる個人事業主にとって、AI会計ソフトはこの5つの準備を一気に整える最短ルートになる。
手順1:マネフォAI確定申告β版で領収書整理を自動化
領収書をスマホで撮影してアップロードするだけで、AIが取引記録を作成する。事前準備の「電帳法対応」と「優良電子帳簿要件」を同時に満たす。
手順2:マネフォクラウド確定申告(本体)で簡易課税届出を管理
本体ソフトでは消費税申告方式(3割特例・簡易課税・本則課税)の切替が可能。年度ごとに有利な方式を選べる柔軟性を確保できる。
手順3:請求書発行をクラウドソフトに統一
インボイス制度対応のクラウド請求書発行を使えば、適格請求書発行事業者の登録番号も自動付記される。取引先の70%控除対応にも貢献する。
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手順4:受発注の経理を一気通貫で見直す
個人事業主であっても、受注側(自分の請求書)と発注側(外注やフリーランスへの支払)の両方を扱う場面は多い。受発注の経理を一気通貫で見直すなら、法人版マネフォクラウドの請求書発行・支払管理連携も検討する価値がある。事業規模が伸びて将来的に法人化する場合も、個人版からデータ構造を連続させて移行できる。
手順5:迷ったら税理士に相談
3制度の適用判定や届出のタイミングは、個別事情で大きく変わる。特に2027年分の有利選択(3割特例 vs 簡易課税 vs 本則課税)は税理士の助言を仰いだほうが結果的に得することが多い。AI会計ソフトでデータを整えておけば、税理士に相談する際の情報整理も格段に速くなる。
あわせて読んでおきたい関連記事は次の3本だ。
- フリーランス向けの確定申告手順はフリーランスの確定申告:freee×ChatGPTで時短する完全ガイドを参照
- 電帳法対応の詳細は電帳法×ChatGPTで中小製造業の書類整理を最短化するで解説
- 日常経理のAIエージェント化は個人事業主の経理AIエージェント実装ガイドを参照
もっと深く学びたい人へ ─ 簿記・確定申告の体系学習
「会計の基本がよく分からないまま会計ソフトを触っている」と感じる個人事業主には、Udemyの簿記・確定申告関連講座が短時間で要点を押さえられる。動画で要点をインプットしてから、AI会計ソフトで実践、というサイクルが学習効率の点で最も高い。
まとめ ─ 2026年10月までが、個人事業主の準備期間
ここまでの内容を一度整理する。
- 3割特例:個人事業主限定・2027-2028年分申告で売上税額の30%納税。基準期間1,000万円以下が条件
- 70%控除:買い手側の経過措置。2026年10月から段階引下げで2031年に完全廃止。1免税事業者あたり年間控除上限も10億→1億に縮小
- 青色申告75万円控除:2027年分申告から拡大。優良な電子帳簿が必須要件
- 準備5項目:①対象判定 ②簡易課税届出 ③電帳法対応 ④請求書再点検 ⑤優良電子帳簿運用
「9月で2割特例が終わる→もう間に合わない」と慌てる必要はない。むしろ5月の今こそ、年末までの7ヶ月で5つの準備をひとつずつ整える絶好の時間だ。AI会計ソフトを軸にすれば、5つの準備のうち4つは1ヶ月で土台が整う。
次のアクション(3ステップ)
- 対象判定:2025年の課税売上高(基準期間)を確認する
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- 税理士に相談:3割特例 vs 簡易課税 vs 本則課税の有利選択を個別事情で詰める
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2027年3月、2026年分の確定申告を「土日を潰す行事」から「平日の夜に終わるルーティン」に変える準備が、今この5月の夜に始められる。
参考情報(一次ソース・2026年5月24日確認)
– 国税庁 3割特例の創設(公式PDF)
– 国税庁 2割特例の概要パンフレット
– 国税庁 電子帳簿等保存制度特設サイト
– 国税庁 電帳法改正の主な内容(公式PDF)
– フリーランス協会:インボイス負担軽減措置の延長
– あおいみらい税理士法人:令和8年改正スケジュール解説
– MONEYIZM:2割特例終了と3割特例の違い
※本記事は2026年5月24日時点の公開情報をもとに作成しています。税制は改正される可能性があるため、最新情報は必ず国税庁公式サイトでご確認ください。個別の税務判断は、税理士または所轄税務署にご相談ください。
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