教員の夏休み、部活の合間にAIで2学期準備を仕込む【2026】
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7月最終週、午後2時の職員室。あなたは公立中学校の国語科教員で、野球部の副顧問です。午前中の部活を終え、汗のひいたシャツのまま席に着いたところです。机の上には、夏の予定表が開いたままになっています。
予定表を目で追います。部活の練習日、市の悉皆研修、三者面談、そして日直。空欄に見えた日も、よく見れば何かが入っています。「夏はまとまった時間がある」。4月にはそう思っていました。けれど現実の夏は、こまかく刻まれています。
去年の記憶がよぎります。2学期の準備に手をつけられないまま8月が過ぎ、最終週に焦って徹夜しました。始業式の朝、体はもう疲れていました。今年は、同じ夏にしたくない。そう思いながら、あなたは予定表を閉じました。
この記事は、その午後2時のあなたと一緒に、夏の仕込み方を組み立て直す記事です。まとまった時間を待つのをやめて、部活後の45分でも進む形にします。生徒の成績や名前をAIに渡すような使い方は、しません。読み終えるころには、「何から」の迷いが、1枚の分類表に変わっているはずです。
夏休みなのに2学期準備が進まないのは、あなたのせいではない
まず、いちばん大事な前提を置きます。夏休みに準備が進まないのは、あなたの計画性のせいではありません。夏休みが「細切れの勤務日」だからです。ここを正しく理解すると、自分を責めずに手を打てます。
世間には「教員は夏休みでヒマ」というイメージがあります。けれど、これは制度の面から見ると正確ではありません。夏季休業日は、学校教育法施行令の第29条にもとづいて教育委員会が定める「児童生徒の休業日」です。子どもが学校に来ない期間を指すものであり、教員の休暇を意味する条文ではありません(e-Gov法令検索「学校教育法施行令」第29条)。つまり、子どもがいなくても、教員は原則として通常どおりの勤務日です。
勤務日である夏に、何が入るのか。まず研修があります。教育公務員特例法は、教員が絶えず研究と修養に努めることを定めています。同法第22条2項は、本属長の承認を得て、勤務場所を離れて研修を行えるとも定めています(e-Gov法令検索「教育公務員特例法」第21条・第22条)。授業に支障のない範囲であることが条件です。夏に多い校外での研修は、休みではなく、この第22条2項にもとづく職務の一つです。研修は「無駄な時間」ではありません。あなたの予定表を埋めているのは、制度上きちんと位置づけられた仕事なのです。
国も、この夏の忙しさを問題として見ています。文部科学省は令和元年、長期休業期間の業務の見直しを求める通知を出しました(文部科学省「夏季等の長期休業期間における学校の業務の適正化等について(通知)」)。この通知は、研修内容の精選や学校閉庁日の設定などを求めています。ただし、閉庁日の設定は自治体によって差があります。この通知が引用する平成30年度の調査では、学校閉庁日を設定していたのは都道府県で40.4%、市区町村で60.4%でした。平成30年度時点の数字であり、現在の設定状況は自治体ごとに確認が必要です。
もう一つ、夏の時間を左右するのが部活動です。休日の部活動は、地域へ運営を移していく制度改革が進んでいます。文部科学省は、部活動改革のガイドラインを示しています(文部科学省「部活動改革及び地域クラブ活動の推進等に関する総合的なガイドライン」)。このガイドラインは、令和8年度から13年度までを「改革実行期間」と位置づけています。この間に、地域展開を段階的に進めるとしています。ただし、これはこれから進んでいく途上の話です。今年の夏の部活が、すぐに全部なくなるわけではありません。副顧問のあなたの午前中は、まだしばらく練習で埋まります。
研修、面談、日直、部活。これらは削れる無駄ではなく、いまの制度の中にある仕事です。だから、夏の準備を考えるときの出発点は「もっと時間を作る」ではありません。「細切れの時間しかない前提で、どう仕込むか」です。
敵は「時間がない」ではなく「まとまった時間を待ってしまう」こと
では、細切れの夏に何をすればいいのか。結論から言います。夏の本当の敵は「時間がない」ことではありません。「まとまった時間を待ってしまう」ことです。
去年のあなたを思い出してください。準備に手をつけなかったのは、やる気がなかったからではないはずです。「もう少し空いた日にまとめてやろう」と考え続けた結果、その空いた日が来なかったのです。1日がかりのつもりでいると、45分の空きは「中途半端だから、また今度」と見送ってしまいます。この見送りが積み重なって、8月最終週の徹夜になります。
発想を、逆にします。1日でまとめて仕上げるのをやめて、45分あればできる「下ごしらえ」に分解します。ここで力になるのが、生成AIです。真っ白な状態から一人で書き始めるのは、まとまった時間と気力が要ります。けれど、AIにたたき台を出させ、そこに手を入れるだけなら、45分の空きでも回せます。
この使い方は、国も校務の活用例として示しています(文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」)。文部科学省の生成AIガイドラインは、授業準備や各種文書のたたき台づくりへの活用を、期待される活用として挙げています。校務の効率化や質の向上につなげる狙いです。AIにたたき台を作らせるのは、後ろめたい近道ではありません。示された使い方の、ど真ん中です。
「まとまった時間を待つ」のをやめる。そのかわりに「45分でできる下ごしらえ」に分ける。この一歩を踏み出すために、まず「何を」仕込むかを整理しましょう。
2学期準備は何から?「2学期逆算・仕込みの3分類」
教員の夏休みに2学期準備が進まない大きな理由は、2学期に来る業務が漠然としていて、どこから手をつけるか決められないことです。そこで、2学期を頭から逆算し、来る業務を3つに分類します。この分類こそ、夏の仕込みの地図になります。
分類の軸は「いつ・どれくらいの頻度で必要になるか」です。次の3つに分けます。①9月第1週に必ず要るもの。②毎週繰り返し要るもの。③あると2学期後半が楽になるもの。この順で仕込めば、始業式で慌てず、その後も息切れしにくくなります。
下の表に、3分類ごとに「2学期に来る業務の例」「AIで下ごしらえできること」「自分の目で確かめる欄」を並べました。いちばん右の「自分の目で確かめる欄」が、この表の心臓部です。AIに任せてよいのは下ごしらえまでで、右の欄は必ず教員が引き受けます。ここを飛ばすと、たたき台がそのまま事故になります。

| 仕込みの分類 | 2学期に来る業務の例 | AIで下ごしらえできること | 自分の目で確かめる欄(AIに任せない) |
|---|---|---|---|
| ①9月第1週に必ず要るもの | 最初の単元の導入・学級開きの語り・2学期最初の学級通信 | 単元の導入の発問案、話す内容のたたき台、通信の下書き | 自校の進度・行事日程との整合、クラスの実態に合うか、日付や持ち物などの事実 |
| ②毎週繰り返し要るもの | 毎時間の教材・確認テスト・週の学級通信・週案 | 教材や確認テスト問題のたたき台、ワークシートからのテスト問題案 | 評価に関わる出題の妥当性、生徒の理解度との合致、誤りや不適切な表現がないか |
| ③あると2学期後半が楽になるもの | 校外学習・文化祭・合唱コンクールの段取り、2学期末の所見の素材集め | 校外学習の実施行程のたたき台、行事案内文の下書き | 安全・予算・当日運営の判断、所見に使う個人情報の扱いと最終文面 |
表の①には、2学期最初の学級通信が入っています。始業式の週は特に忙しいので、通信は夏のうちに骨だけでも作っておくと楽です。作り方は学級通信×AIの時短術にまとめました。素材メモから下書きを作り、赤を入れて仕上げる流れは、そのまま2学期の1号に使えます。
③には、2学期末の所見の素材集めを入れました。所見は、2学期末に一気に書こうとすると必ず苦しくなります。夏のうちに「観察の観点」を用意しておくと、9月からの記録が変わります。ただし所見は1人ひとりを評価する文書で、個人情報の扱いが通信とは異なります。AIを使う前の確認点は通知表の所見をAIで書く前の確認ポイントに別に整理しています。
この3分類を1枚作るだけで、「何から」の迷いが消えます。次は、右から2列目の「AIで下ごしらえできること」を、もう少し具体的にほどいていきます。
AIで何を仕込める?——授業準備のたたき台リスト
3分類の中身のうち、いちばんボリュームがあるのが授業準備です。ここでAIが下ごしらえできる範囲は、思っているより具体的に決まっています。文部科学省のガイドラインが、授業準備での活用例を名前を挙げて示しているからです。
ガイドラインは、教職員による校務での利活用例として、授業準備について次のような例を挙げています。夏の仕込みに置き換えられるものばかりです。
「授業で取り扱う教材や確認テスト問題のたたき台を作成する」
「授業での発問に対する回答のシミュレーション相手として活用する」
「授業で使用したワークシートや振り返りの内容を基にテスト問題のたたき台を作成する」
「校外学習の実施行程作成のたたき台を作成する」
(出典:文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」)
この4つは、そのまま夏の下ごしらえリストになります。2学期最初の単元で使う教材の案。確認テストのたたき台。自分が考えた発問を投げて、生徒がどう答えそうかを試す相手。校外学習の行程案。どれも、45分あれば1つずつ形にできます。
たとえば、発問のシミュレーションです。指示(プロンプト)は短くて構いません。生徒の情報は入れず、単元と学年だけを渡します。
中学2年国語の説明文の授業で、「筆者はなぜこの例を選んだと思うか」と発問します。中学2年生役として、想定される答えを、浅いものから深いものまで3段階で挙げてください。
数秒で、答えの幅が返ってきます。これを見て、「浅い答えで止まりそうなら、次の一手をどう用意するか」を考える。これが、AIを「発問の壁打ち相手」にする使い方です。授業案そのものをAIに丸投げするのではなく、あなたの発問を試すために使います。
ここで、絶対に守る一線があります。プロンプトに、成績や生徒個人の情報を入れないことです。同じガイドラインは、校務で生成AIを使う際の注意として、こう明記しています。
「プロンプトに重要性の高い情報である成績情報等を入力してはならない。」
テスト問題のたたき台を作るときは、この一線に触れやすくなります。過去の答案や、個々の生徒の点数を渡したくなるからです。けれど、それはしません。AIに渡すのは「学年・単元・問いたい観点」まで。個々の答案や成績、氏名は渡しません。加えて、公立学校は個人情報保護のうえで行政機関等として扱われる立場にあり、個人情報の取り扱いには特に慎重さが求められます。生成AIに個人情報を含む指示を入れると、外部に情報が渡るリスクがあります(個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。
AIに任せるのは「たたき台まで」。出題の妥当性や、評価に関わる最終判断は、教員が引き受けます。この線を守れば、授業準備のたたき台づくりは、安心して夏の仕込みに使えます。なお、生成AIの利用について独自のルールを定めている自治体や学校もあります。使う前に、勤務先の教育委員会・学校の方針も一度確認しておくと、より安心です。
細切れ45分で回す——「部活後45分ワンセットの仕込みの型」
仕込む中身が決まったら、次は「回し方」です。ここで、部活後の45分を1つの単位にした「仕込みの型」を用意します。この型があると、空いた45分を見送らずに使えるようになります。
型のねらいは、45分を欲張らないことです。1回のワンセットで狙うのは、3分類表の中の「1テーマだけ」。教材も、テストも、行事も、と詰め込むと、どれも中途半端になります。1回1テーマと決めておくと、45分が終わったときに「1つ片づいた」という手応えが残ります。この手応えが、次の45分を呼びます。
下の図が、45分ワンセットの流れです。前半は手を広げてたたき台を出す時間、後半は手を動かして削り込む時間。45分を前後で役割分けすると、細切れの空きでも1テーマぶんの仕込みが貯まっていきます。

- 0〜5分:今日やる1テーマを、3分類表から1つだけ選ぶ。迷ったら①→②→③の順に、まだ手つかずのものを選びます。
- 5〜25分:AIにたたき台を頼む。渡す材料は「学年・単元・観点」まで。成績・氏名・答案は渡しません。出てきたたたき台を、まずはそのまま受け取ります。
- 25〜40分:自分の目で確かめ、赤を入れる。3分類表の右端「自分の目で確かめる欄」を見ながら、事実・クラスの実態・評価の判断を、あなたの手で足します。ここがいちばん教員の仕事です。
- 40〜45分:仕込み済みフォルダに保存し、次回の1テーマをメモする。フォルダに1つ増やし、「次はこれ」を1行残して終わります。
大切なのは、この45分を「8月最終週に何回も」ではなく、「夏の間に少しずつ」積むことです。研修の空き時間、面談と面談の間、部活が早く終わった日の午後。細切れの45分を、そのつど1テーマずつ埋めていきます。週に2回でも、夏の間に十数テーマの仕込みが貯まります。これが、去年との決定的な違いになります。
なお、2学期は授業だけでなく、保護者からの連絡や相談も増える時期です。対応そのものは夏に前倒しできませんが、「記録の型」を先に用意しておくと、9月からの負担が変わります。備え方は中学校の保護者対応、記録の残し方をAIで整えるにまとめました。夏のうちに型だけ手元に置いておくのも、③の仕込みの一つです。
45分ワンセットは、完璧を目指す型ではありません。1回で1テーマ、たたき台に赤を入れて保存する。それだけです。研修や部活で本当に余裕がない日、あるいはただ体を休めたい日は、無理に45分をひねり出さなくてもかまいません。休むこともまた、2学期を元気に迎えるための大切な仕込みです。この小さな1周を、夏の細切れの中でくり返すことが、2学期の自分への貯金になります。
2学期初日の朝に、机の上に残したいもの
ここまでの仕込みが、2学期初日の朝に何を変えるのか。最後に、その朝の景色を一緒に描いておきます。
想像してください。始業式の朝、あなたは少し早く出勤して、机に着きます。去年のこの朝は、白紙の授業案と、山積みの「これからやること」に囲まれていました。けれど今年は違います。机の上のパソコンには、夏のあいだに少しずつ貯めた「仕込み済みフォルダ」があります。中には、最初の単元の教材のたたき台、確認テストの素案、行事の行程案、2学期最初の通信の骨。すべて、あなたの赤が入ったものです。
去年と同じ夏の忙しさの中で、この差はどこから生まれたのか。答えは、才能でも根性でもありません。「まとまった時間を待たなかった」ことです。45分あれば1テーマ。この小さな型を、部活と研修と面談の合間にくり返しただけです。夏の敵だった「細切れ」は、味方に変わりました。
そして、この夏に手に入れたものは、仕込み済みフォルダの中身だけではありません。細切れの45分を逆算で積むという、夏の時間の使い方そのものです。2学期に来る業務を頭から逆算し、空いた時間へ先回りして置いておく。この段取りは、教材づくりを超えて、あなたの夏の過ごし方を変えていきます。
もし、この「たたき台を作らせて、自分で仕上げる」という型を、もっと自分のものにしたいと感じたら。教員自身がAIを学ぶ時間を、夏のどこかに置いてみるのも一つの選択です。仕込みの型は、あなた自身への贈り物にもなります。
校務のいろいろな場面でAIを使いこなしたい、という方には、複数のテーマを体系立てて学べる講座があります。DMM 生成AI CAMPは、生成AIの使い方を月額制で幅広く学べるサービスです。授業準備に限らず、文書づくりや情報整理まで、応用の幅を一度に広げたい教員に向いています。料金や内容は変わることがあるので、公式サイトで確認してください。
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一方、「広く学ぶ前に、まず1テーマだけ試したい」という人には、買い切り型のUdemyが向いています。発問の壁打ちや文章づくりなど、気になる分野を1本から選べるので、部活後の細切れ時間にも収まります。
最後に一つ。AIとの付き合い方は、教員だけの課題ではありません。この夏、家庭でも、子どもが宿題でAIをどう使うかに、多くの保護者が向き合っています。保護者側の視点は夏休みの宿題計画×AI|計画倒れを立て直す親の伴走術が参考になります。学校と家庭が、同じ「丸投げしない」使い方でAIと向き合えたら、それがいちばんの土台になるはずです。まずは今日、3分類表を1枚作り、次の45分で仕込む1テーマを、1つだけ選んでみてください。
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