白紙のエンディングノートをAIと一問一答で埋める——終活、怖くない始め方【2026】

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仏壇の引き出しを開けると、3年前に買ったエンディングノートが入っている。表紙をめくった1ページ目に、自分の名前だけ。あとはずっと、真っ白なままだ。

買ったときは「少しずつ書こう」と思っていた。でも、いざ開くと手が止まる。何から書けばいいのか、分からない。気が重くなって、また引き出しにそっとしまう。その繰り返しで、3年が過ぎてしまった。

この記事の結論を、先にお伝えします。白紙のエンディングノートは、AIを「聞き役」にして、一問一答で少しずつ埋めるのが進みやすくなります。 自分一人で考え込まなくていいのです。AIがやさしく1問ずつ聞いてくれて、あなたが話した言葉を、読みやすい下書きに整えてくれます。完璧な1冊を目指さなくて大丈夫。まずは「今日の1ページ」から始めましょう。

ただし、最初に一つだけ、大切な前提があります。次の章から、順番にお話しします。

1. まず確かめたい——エンディングノートは「遺言書」ではありません

いちばん最初に、知っておいてほしいことがあります。エンディングノートは、法律上の「遺言書」ではありません。 法的な効力はないのです。これを知ると、肩の力が抜けて、ぐっと書きやすくなります。

なぜ書きやすくなるのか。理由は、効力がないからこそ「気軽に書ける」からです。遺言書には、全文を自分で手書きする、日付や名前を入れる、印を押す、といった細かい決まりがあります。決まりを外れると無効になることもあります。一方、エンディングノートには、そうした決まりがありません。鉛筆で書いても、書き直しても、順番がばらばらでもいい。あなたの言葉で、正直に書けるのです。

具体的に、線を引いておきましょう。財産を「誰に、どう分けてほしいか」という希望は、エンディングノートに書いても、その通りにする法的な力はありません。それを確実に残したいときは、遺言書を用意します。遺言書については、法務省の自筆証書遺言書保管制度という、法務局が遺言書を預かる仕組みもあります。エンディングノートとの違いを知る入口として、目を通しておくと安心です。

ですから、こう考えてください。エンディングノートは「気持ちや希望を伝えるための、自由なノート」。遺言書は「財産のことを、法的に確実に残すための書類」。役割が違うのです。だからエンディングノートは、気負わず、今日から書き始めて大丈夫です。

2. 終活は何から書く?——エンディングノートが白紙のまま眠る、本当の理由

エンディングノートが進まないのは、あなたの気力が足りないからではありません。「何を書けばいいか分からない」という、ノートそのものの作りに理由があります。 ここが分かると、気持ちがずいぶん楽になります。

理由は、大きく3つあります。1つ目は「項目が多くて、重い」こと。財産、医療、お葬式、人間関係……。最初のページから全部を考えようとすると、誰でも気が滅入ります。2つ目は「何から書くか、順番が分からない」こと。白紙を前にすると、人は固まってしまうものです。3つ目は「縁起でもない、と感じてしまう」こと。自分の最期を想像する作業は、一人だと、つい後回しになります。

たとえば、あなたもこんな経験はないでしょうか。ノートを開いて「医療の希望」という欄を見る。でも、何をどう書けばいいか分からない。少し考えて、疲れて、また閉じる。これは、あなたが悪いのではありません。「白紙に、一人で向き合う」という状況そのものが、難しいのです。

つまり、進まないのは「能力」の問題ではなく「やり方」の問題です。一人で白紙とにらめっこするのをやめて、誰かに1問ずつ聞いてもらう。その「誰か」を、AIにお願いする。それだけで、白紙が少しずつ埋まり始めます。

3. AIとの「一問一答」——実際の会話は、こんな感じでした

ここが、この記事のいちばん大事なところです。AIを「聞き役」にすると、エンディングノートは一人で書くものではなく、対話しながら埋めていくものに変わります。 どんな会話になるのか、まずは実際のやりとりを見てみましょう。

AIを聞き役にするのがいい理由は、やさしく1問ずつ聞いて、あなたの答えを待ってくれるからです。急かしません。何度言い直しても、嫌な顔をしません。あなたは、思いついたことを、ぽつぽつ話すだけでいいのです。難しい言葉も要りません。

では、70歳のあなたとAIの会話を、のぞいてみましょう。スマホの画面に文字を打つのでも、声で話しかけるのでも構いません。

AI: こんにちは。今日は、エンディングノートを一緒に少しずつ埋めていきましょう。一度に全部は考えなくて大丈夫です。まず、もしものとき、体のことでご家族に知っておいてほしいことはありますか。たとえば、かかりつけのお医者さんや、飲んでいるお薬などです。

あなた: えっと……。近所の内科にかかっています。血圧の薬を、毎朝飲んでいます。

AI: 教えてくださって、ありがとうございます。では、もう一つだけ。もし自分で判断できなくなったとき、「こうしてほしい」という希望はありますか。難しければ「家族に任せる」でも大丈夫ですよ。

あなた: うーん、難しいわね。痛いのだけは、できるだけ避けてほしい。あとは、子どもたちで話し合って決めてくれたらいい。

AI: 大切なお気持ちですね。記録しておきます。次は、お金や物のことです。通帳や保険の証券を、どのあたりに保管しているか、ご家族に伝わるようにしておきましょう。場所だけで大丈夫です。番号などは書かなくていいですよ。

あなた: 通帳は、居間のたんすの一番上。保険の書類は、仏壇の引き出しに入れてあります。

AI: ありがとうございます。場所が分かれば、ご家族はとても助かります。最後に、大切な方へ伝えたいことを、一言だけ。どなたに、どんな言葉を残したいですか。

あなた: 子どもたちに……。今まで、ありがとう。仲良くしてね、って。それだけ伝われば、いいわ。

いかがでしょうか。難しいことは、何も話していません。AIが1問ずつ聞いてくれるので、あなたは思い出したことを答えるだけ。白紙を前にして固まりにくくなります。

そして、ここからがAIの本領です。この会話のあと、AIに「今の話を、ノートの下書きにまとめて」とお願いすると、こんな1ページが出てきます。白紙だったノートが、こう変わります。

白紙のエンディングノートが、AIとの一問一答を経て下書き1ページに変わるbefore→after図

【Before:3年間、白紙のページ】
(名前だけ書いてあり、あとは真っ白)

【After:AIが整えた、下書き1ページ】

■ 医療・介護のこと
・かかりつけは近所の内科。毎朝、血圧の薬を飲んでいます。
・できるだけ痛みは避けてほしい。判断が難しいときは、子どもたちで話し合って決めてください。

■ お金や物の「ありか」
・通帳:居間のたんすの一番上の引き出し
・保険の証券:仏壇の引き出し
(※暗証番号や口座番号は、ここには書きません)

■ 大切な人へのひとこと
・子どもたちへ。今まで、本当にありがとう。これからも、仲良くしてね。

たった3つの項目ですが、白紙だったページが「あなたの言葉のノート」に変わりました。あとは、この下書きを見ながら、自分の手でノートに書き写すだけ。気が向いたら、書き直してもいい。大切な人への言葉を残す作業は、実家の写真を思い出の記録に変える整理術とも、どこか似ています。減らすのではなく、残す。それが、心に残る記録になります。

4. AIへの頼み方——エンディングノートの書き方は、最初のひとことで決まる

では、その会話を始めるには、どうすればいいのか。AIには、最初に「聞き役になってね」とお願いするだけで大丈夫です。 難しい操作は要りません。最初のひとことさえ伝えれば、あとはAIが1問ずつ進めてくれます。

なぜ最初のひとことが大事かというと、AIに役割を伝えておくと、こちらの調子に合わせてくれるからです。「やさしく、1問ずつ」「専門用語は使わないで」と頼んでおけば、その通りに振る舞ってくれます。AIへの頼み方の基本は、プロンプトの書き方入門でもやさしく解説しています。ここでは、そのまま使えるものを一つだけ、置いておきます。

下の文章を、AIに最初に送ってみてください。スマホで打つのが大変なら、声で読み上げて伝えても構いません。

【最初に送る、ひとこと】
あなたは、エンディングノート作りを手伝ってくれる、やさしい聞き役です。私は70歳で、何を書けばいいか分からず、ノートが白紙のままです。次のルールで、私に1問ずつ質問してください。
・専門用語は使わず、やさしい言葉で。
・一度にたくさん聞かず、1問ずつ。私の答えを待ってから、次へ進んでください。
・「医療や介護の希望」→「お金や物のありか(場所だけ)」→「大切な人へのひとこと」の順で聞いてください。
・口座番号・暗証番号・マイナンバーなどは、聞かないでください。
・最後に、私が話した言葉だけを使って、ノートの下書きを作ってください。
では、最初の質問からお願いします。

このひとことを送れば、第3章でご覧いただいたような会話が始まります。ポイントは、聞いてほしい順番と、「個人情報は聞かないで」というルールを、先に伝えておくことです。これだけで、AIはあなたの安心できる聞き役になります。まずは、この一文をそのまま送ってみましょう。

5. AIに話してはいけないこと——この情報は入れません

便利なAIですが、入れてはいけない情報があります。口座番号・暗証番号・マイナンバー・パスワード・くわしい病歴などは、AIに入力しないでください。 ここは、安全のために必ず守ってほしいお約束です。

理由は、入力した情報が、どう扱われるか分からないことがあるからです。サービスによっては、入力した内容が保存されたり、AIの学習に使われたりする場合があります。個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用に関する注意喚起で、入力する情報の取り扱いに注意するよう呼びかけています。大切な番号は、AIではなく、ノートの安全な場所にだけ書きましょう。

具体的に、書き分けの目安をお伝えします。AIに伝えてよいのは「通帳は、たんすの一番上」といった”場所”までです。「口座番号は◯◯」という”中身”は、伝えません。下の図に、書き分けの目安をまとめました。

エンディングノートに書くこと・AIに入れてはいけない情報・専門家に相談することの3分類図

医療や介護の希望についても、大切な注意があります。「どんな治療を受けるか・受けないか」を、AIに判断させてはいけません。 AIは、医療を決める相手ではないからです。医療の希望は、本人と家族、そしてお医者さんや看護師さんとで、繰り返し話し合って決めるものです。この話し合いの取り組みを、厚生労働省は「人生会議」(ACP)という愛称で紹介しています。エンディングノートの「医療の希望」欄は、この話し合いのきっかけにすると、ぐっと深まります。

ですから、こう覚えてください。AIは「聞き役・下書き係」。番号などの秘密の情報は入れない。医療を決めるのは、AIではなく、あなたと家族と医療者。この線さえ守れば、AIは安心して使える、心強い相談相手になります。

6. 書いた後がいちばん大切——しまう場所と、ひとことの伝え方

ノートが少し埋まったら、もう一歩。書いたノートは「しまう場所」を、信頼できる人に一言だけ伝えておきましょう。 せっかく書いても、どこにあるか伝わっていないと、いざというときに見つけてもらえません。

理由は、エンディングノートは「見つけてもらって、初めて役に立つ」ものだからです。引き出しの奥に眠ったままでは、白紙のときと変わりません。全部を読んでもらう必要はありません。「もしものときは、仏壇の引き出しのノートを見てね」。この一言を、子どもや、信頼できる人に伝えておくだけで十分です。

そして、終活には、注意したいことも一つあります。最近は、終活を支える有料のサービスや、身元保証のサービスが増えています。便利なものもありますが、契約をめぐるトラブルの相談も寄せられています。国民生活センターも身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルについて、契約は慎重にと注意を促しています。うまい話や、急かす勧誘には、すぐ契約せず、まず家族や公的な窓口に相談してください。終活にまつわる勧誘やお金のトラブルは、偽SMSやサポート詐欺を親子で見分ける方法の考え方も役に立ちます。

最後に、もう一度だけ。財産の分け方、相続、税金、遺言書といった「お金と法律の手続き」は、AIやエンディングノートで完結させてはいけません。これらは、弁護士・司法書士・税理士、そして公証役場といった専門家の領域です。相続の最初の相談で、どの専門家に頼ればいいか迷ったら、相続の最初の相談をAIで一次整理する方法も参考にしてください。エンディングノートは気持ちを残すもの、手続きは専門家へ。この役割分担を、忘れないでください。

7. まとめ——完璧な1冊より、今日の1ページ

ここまで、白紙のエンディングノートを、AIを聞き役にして一問一答で埋める方法を、お話ししてきました。最後に、いちばん大切な心構えをお伝えします。完璧な1冊を、目指さなくていいのです。 大事なのは、今日の1ページです。

なぜなら、エンディングノートに「完成」はないからです。全部の項目を埋め終える日を待っていると、いつまでも始められません。けれど「今日は、医療のことだけ」「今日は、子どもへのひとことだけ」なら、誰でも今日から始められます。書き直しも自由です。気持ちが変わったら、何度でも更新していいのです。

そして、忘れないでください。エンディングノートは、遺言書ではありません。あなたの気持ちと希望を、あなたの言葉で残す、自由なノートです。AIは、その作業をそっと手伝う聞き役。お金や法律の手続きは、専門家へ。この線さえ守れば、年金暮らしのあなたも、自分の人生を、自分の言葉で残せます。それは、子どもたちへの、何よりの思いやりになります。

こうしたAIの使い方を、もう少し基礎から学んでみたい方へ。AIを「相談役」として使えるようになると、終活に限らず、暮らしのいろいろな場面で助けになります。

  • Udemyで「AI・ChatGPT活用」講座を探す — 動画を見ながら、AIへの頼み方を基礎から学べます。買い切り型なので、自分のペースで進めたい人に向いています。年齢を問わず、誰でも始められます。
  • DMM 生成AI CAMP — こちらは、親の終活を手伝うお子さん世代(50代など、働きながらAIを学びたい方)に向いた講座です。専門知識ゼロから、AIを仕事や暮らしに活かす学び方を、体系的に身につけられます。

次のアクション

今夜、スマホでAIを開いて、たった1問だけ、聞いてもらってみてください。「エンディングノートの聞き役になって。まず1問だけ、やさしく質問して」。そう打つだけでいい。返ってきた質問に、思いついたことを一言、答えてみる。それだけで、3年間白紙だったノートの、最初の1行が生まれます。完璧でなくて大丈夫。今日の1ページから、始めましょう。

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