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月曜の朝6時40分。ドライバー10名が出庫した後の事務所で、先週1週間ぶんのヒヤリハット日報、合計23枚に目を通している運行管理者。「交差点で歩行者にヒヤッとした」「車線変更で後続車に気づくのが遅れた」——文字は読めます。件数も数えられます。でも、朝礼まであと20分。「では、今週は誰に、何を、どう声をかければいいのか」。そこで手が止まる。

これは、従業員10名前後の中小運送会社で安全管理を一人で背負う方なら、覚えのある場面ではないでしょうか。記録は溜まっている。なのに「具体的な指導アクション」に変換できない。本記事は、この詰まりを「指導優先度を判定する4分岐フローチャート」という1つの仕組みで解きほぐします。AIはそのフローを動かす道具として使います。

この記事の結論を先に言います。安全管理が止まるのは「分析力が足りないから」ではなく、「集計の次にある”判断の分岐”が言語化されていないから」です。分岐さえ決めれば、AIに日報を渡すだけで「今週、誰に何をするか」が自動で並びます。

「記録はある、なのに指導できない」——安全管理が止まる本当の理由

中小運送会社の安全管理が止まる原因は、記録不足ではありません。むしろ逆で、記録は法令で義務づけられているため、たいていの会社に存在します。詰まるのは「記録 → 集計」までは進めても、「集計 → 誰にどう動くか」の一歩が、担当者の頭の中の暗黙知に依存しているからです。

国土交通省は運輸安全マネジメント制度のなかで、経営トップから現場まで一体となった安全管理と、PDCAサイクルの確立を求めています。つまり「記録して終わり」ではなく、「分析し、対策し、現場へ返す」ところまでが制度の趣旨です。ところが一人で兼任していると、この後半が後回しになりがちです。

理由はシンプルで、後半が「件数の集計」ではなく「優先順位づけ」という別の頭の使い方を要求するからです。10名のドライバーがいれば、「全員に同じ注意喚起」では響きません。かといって「今週は誰から声をかけるべきか」を毎週ゼロから考えるのは、現実には時間が足りない。だから多くの現場が「今週も全員に一般論を話して終わり」になります。

ここを変える鍵が、判断を毎回ひらめきで決めるのをやめ、あらかじめ”分岐の条件”を文章にしておくことです。条件さえ決まっていれば、その判定はAIに任せられます。次章で、その分岐を具体的に組み立てます。

【この記事の核】ヒヤリハットから「今週の指導アクション」まで4分岐で決めるフローチャート

ここが本記事の主役です。ヒヤリハット情報を「件数」で眺めるのをやめ、1人ひとりに対して上から順に4つの問いを当て、最後に必ず1つの”指導アクション”へ着地させる——その分岐フローを設計します。

国土交通省の事故、ヒヤリ・ハット情報等の収集・活用の進め方(自動車モード編)では、ヒヤリハットを「誰が・いつ・どこで・どのように」で分類するよう求めています。さらに、多発するドライバーへ個別指導につなげるプロセスも示されています。この公的な考え方を、現場で毎週回せる4つの分岐に落とし込んだものが、次のチャートです。

【1人のドライバーについて、上から順に判定する】

ヒヤリハット情報(今週ぶん)
    ↓
[分岐A] 件数が前週比 +2件以上か?
    ├─ YES → 「重点指導対象」 → 個別1on1(5分でも対面で)
    └─ NO  ↓
[分岐B] 同じカテゴリ(追突/歩行者/車線変更 等)が2週連続か?
    ├─ YES → 「パターン指導対象」 → 朝礼で全員向けに注意喚起
    └─ NO  ↓
[分岐C] ヒヤリハットなしが2週連続か?
    ├─ YES → 「好事例共有」対象 → 朝礼で成功例として紹介
    └─ NO  → 「通常観察継続」 → 次週まで経過観察

ヒヤリハットから指導アクションを決める4分岐フローチャートの図解。分岐A・B・Cの条件と、重点指導・パターン指導・好事例共有・通常観察の4つの着地点を示す

このフローの肝は、「件数が多い=悪い」という単純な見方をしないことです。たとえば分岐Cは、ヒヤリハットが「ない」人を見つけてほめる経路です。安全管理は叱る材料探しに偏りがちですが、好事例を朝礼で共有すると、現場の心理的なハードルが下がり、かえって小さなヒヤリの報告が増えます。報告が増えれば、重大事故の芽を早く拾えます。

なお、閾値(+2件、2週連続など)は会社の規模や運行形態で調整してください。10名規模なら上の数字が目安になりますが、これは絶対値ではありません。「自社で回せる分岐」に育てることが目的です。

前工程である日報そのものの集計を効率化したい方は、ドライバー日報をAIで集計・整理する方法もあわせてご覧ください。本記事の「分析・判断」は、その集計が整っているほど精度が上がります。

この4分岐を動かすAIプロンプト(コピペで試せます)

分岐の条件が決まれば、判定そのものはAIに任せられます。やることは、1週間ぶんのヒヤリハット情報をテキストで貼り付け、「このルールで判定して」と指示するだけです。以下は、上のフローチャートをそのまま指示文に変換したものです。ChatGPTで動作を確認しています(執筆時点)。

あなたは中小運送会社の安全管理アシスタントです。
以下のヒヤリハット記録を、ドライバーごとに次の4分岐ルールで判定してください。

# 判定ルール(上から順に当て、最初に当てはまったもので確定)
A. 件数が前週比+2件以上 → 「重点指導対象」(個別1on1)
B. 同じカテゴリが2週連続 → 「パターン指導対象」(朝礼で全員へ注意喚起)
C. ヒヤリハットなしが2週連続 → 「好事例共有」(朝礼で紹介)
上記いずれにも該当しない → 「通常観察継続」

# 出力フォーマット(ドライバーごとに)
- 氏名(仮名でよい):
- 判定区分:
- 判定の理由(どの分岐に当たったか):
- 今週の具体アクション(1文):

# 注意
- 推測で件数を補わず、記録にある事実だけで判定すること
- 最後に「今週、最優先で声をかけるべき1名」を理由つきで挙げること

# ヒヤリハット記録(今週ぶん+前週ぶん)
(ここに記録を貼り付け)

ポイントは2つあります。第一に、判定ルールを「上から順に、最初に当たったもので確定」と明示していること。これがないとAIは複数の区分を混在させ、現場で迷いが生じます。第二に、「最優先の1名」を最後に必ず挙げさせること。忙しい朝に「結局、今日は誰からか」を即決できるようにするためです。

このプロンプトを土台に、自社の運行形態(長距離・地場配送など)に合わせて分岐条件を書き換えれば、そのまま毎週の運用に乗ります。

PR:こうしたプロンプト設計を体系的に学び、安全管理だけでなく点呼記録や荷主への報告まで業務全体へ広げたい方には、実務に直結した講座から入るのが近道です。AI・ChatGPT活用の講座はUdemyに多数あり、買い切りで自分のペースで進められます。

AIが「誰を・なぜ・どう指導するか」を示す——3パターンの出力例

実際にこのフローを回すと、AIの出力はどう変わるのか。架空のドライバー3名で、判定結果のイメージを示します(数値・氏名はすべて架空です)。

10名分のヒヤリハット日報を入力すると、AIが指導優先度リストを出力するBefore→Afterのイメージ図

パターン1:重点指導対象(分岐Aに該当)

氏名:A(仮名)/判定区分:重点指導対象/理由:今週4件・前週1件で前週比+3件と急増(分岐A)/今週のアクション:朝礼後に5分の個別面談を設定し、件数が増えた背景(体調・運行ルート変更など)を本人に確認する。

件数の急増は、体調や担当ルートの変化といった「本人の事情」が隠れていることが少なくありません。だからこのパターンは全体注意ではなく、まず個別で背景を聴く経路になっています。

パターン2:パターン指導対象(分岐Bに該当)

氏名:B(仮名)/判定区分:パターン指導対象/理由:「歩行者」カテゴリが2週連続(分岐B)/今週のアクション:朝礼で全員に対し、生活道路での歩行者飛び出しを想定した減速ポイントを共有する。

同じ種類のヒヤリが続くのは、特定ドライバー個人の問題というより、運行エリアや時間帯に共通する要因が背景にあることがあります。そのため、本人を名指しせず全員向けの注意喚起にしています。

パターン3:好事例共有(分岐Cに該当)

氏名:C(仮名)/判定区分:好事例共有/理由:ヒヤリハットなしが2週連続(分岐C)/今週のアクション:朝礼で「2週間ヒヤリなし」を紹介し、本人の心がけ(車間の取り方など)を一言コメントしてもらう。

「ない」状態を見つけてほめるのは、件数集計だけでは絶対に出てこない着眼です。AIにフローを渡すと、この経路も機械的に拾えるようになります。

集計から一歩進んだ「ヒヤリハット記録そのもののAI化」を製造業の現場で考えたい方は、製造業のヒヤリハット・安全日報をAIで効率化する方法もクロスリファレンスとして役立ちます。

運行管理者が引くべき線——「AIに任せること/人が判断すること」

この仕組みを安心して使うには、AIに任せる範囲と、人が必ず判断する範囲の線引きが欠かせません。安全管理は人の命に関わる領域であり、AIの出力はあくまで「判断のたたき台」です。

任せてよいのは、事実にもとづく分類・整理・優先順位づけの下ごしらえです。具体的には、件数の集計、カテゴリ分け、分岐ルールに沿った仮の区分け、朝礼で話す順番の整理など。ここはAIが得意で、しかも毎週かかる時間を大きく減らせます。

一方、人が必ず行うべきは、最終的な指導内容の決定と、ドライバーへの実際の声かけです。AIが「重点指導対象」と判定しても、その背景に体調不良や家庭の事情があるかは、対面で本人に聴かなければ分かりません。指導は信頼関係のうえに成り立つもので、判定区分の通知で代替できるものではありません。最終判断は、必ず運行管理者など人が担ってください。

そしてもう1つ重要な線引きが、個人情報の扱いです。個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しており、AIに入力した情報の取り扱いには注意が求められています。日報にはドライバーの氏名・健康状態・運転の癖といった個人情報が含まれます。そこで、AIに渡すときは氏名を「Aさん」「Bさん」などの仮名に置き換え、健康情報など機微な内容は入力しない運用を徹底してください。固有名詞や個人を特定できる情報を、そのままAIに入れないことが原則です。

この取り組みは「PDCA義務」に対応する——制度上の位置づけ

最後に、このAI活用が思いつきの効率化ではなく、制度が求める安全管理の流れに沿ったものであることを確認します。ここを押さえると、社内や荷主への説明にも使えます。

そもそもドライバーの日報は、任意のメモではありません。貨物自動車運送事業輸送安全規則では、乗務員の点呼や乗務等の記録について定めがあり、日々の記録は法令にもとづく業務です。つまり、すでに義務として作られている記録を、安全向上のために「使い切る」のが本記事の発想です。

さらに国土交通省の運輸事業者における安全管理の進め方に関するガイドライン(令和5年6月)は、PDCAサイクルの継続的な運用を求めています。具体的には、事故・ヒヤリハット情報の収集・活用・現場へのフィードバックを繰り返すことが必要とされています。本記事の4分岐フローは、このうち「Check(分析)→ Act(指導という改善行動)」の部分を、毎週確実に回すための具体的な道具立てだと位置づけられます。

なお、本記事は一般的な進め方の解説です。実際の安全管理体制の構築や、運輸安全マネジメント制度上の個別の対応については、最終的な判断を自社の安全統括管理者が行い、必要に応じて所管の運輸支局や専門家へご相談ください。設備や車両の点検記録までAIで整えたい場合は、設備点検・保全記録をAIで効率化する方法も参考になります。

まとめ:今週の月曜朝礼を「データにもとづく3分間」に変える最初の一歩

安全管理が止まるのは、分析力の問題ではなく「集計の次にある判断の分岐」が言語化されていないからでした。本記事では、その分岐を4つの問い(件数急増・同カテゴリ連続・無事故継続・それ以外)に整理し、AIに判定を任せる流れを示しました。

この週末にできる最初の一歩は、たった1つです。今週ぶんと前週ぶんのヒヤリハット記録をテキストにまとめ、本記事のプロンプトに貼って、AIに「最優先で声をかけるべき1名」を出させてみること。それだけで、次の月曜の朝礼が「一般論の繰り返し」から「今週はCさんの好事例を共有し、Aさんに5分声をかける」という具体的な3分間に変わります。

そして、ここで身につく「業務を分岐に分解してAIに任せる」考え方は、点呼記録・荷主への報告・配車計画など、運送会社のあらゆる業務に応用できます。安全管理を入り口に、社内のDXを一人で推し進める担当者へ——その一歩を踏み出したい方は、次の学習を検討してみてください。

PR:安全管理だけでなく、点呼記録・荷主報告・配車計画まで業務全体をAIで設計できる人材を社内に育てたい方には、体系的に学べるDMM 生成AI CAMPのようなプログラムが選択肢になります。単発のプロンプト活用にとどまらず、継続的にDXを推進する力を身につけたい方に向いています。

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