※本記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれています。紹介しているサービスの選定は編集部の基準に基づいており、広告主から内容の指定は受けていません。

建設業2024年問題×AI工数集計|バラバラ日報をCCUS・週休2日・36協定に効かせる

先月、ある協力会社の職人の残業が、月100時間を超えていた。所長がそれを知ったのは、全社の日報を集計し終えた月末だった。時間外労働の上限は、原則で月45時間。特別条項を結んでも、単月100時間未満が罰則つきの壁になる。だが工数を月末にしかつかんでいなければ、超えそうな段階で手を打てない。気づいたときには、もう間に合わない。

この記事は、その「誰が今月、何人工働いたか」をバラバラな日報からAIにいったん揃えさせる話だ。ゴールは、上限に達する前に気づける状態をつくり、時間外労働の上限規制(建設業2024年問題)への対応に使えるところまで持っていくこと。 工数の集計を、単なる事務時短ではなく「長時間労働の是正・週休2日・建設キャリアアップシステム(CCUS)」に効かせる道具として組み直す。


「月45時間の壁」が、工数の可視化を迫っている

最初に結論を置く。いま工数を見える化すべき理由は、事務を楽にするためではなく、時間外労働の上限規制に現場が間に合わなくなるからだ。 月末に集計が炎上している現場ほど、誰がいつ上限に達するかを「事後」でしか知れない。

建設業には、長く猶予されていた時間外労働の上限規制が、2024年4月から適用されている。原則は月45時間・年360時間。特別条項を結んでも年720時間以内、複数月の平均で80時間以内、単月100時間未満といった枠がかかる。この枠は労働基準法に基づく上限で、違反には罰則が定められている。

出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制(建設業への適用)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html
※制度の詳細・最新の取扱いは公表ページでご確認ください。

問題は、上限が「月単位・複数月平均」で効いてくることだ。月末にまとめて集計していては、ある職人が今月すでに危ない水準なのか、来月の段取りで平準化できるのかを、手を打てる時点で把握できない。厚生労働省は建設業向けの専用ポータルで、働き方改革の解説や相談先をまとめている。

出典:厚生労働省「建設業従事者の長時間労働改善ポータルサイト」
https://kensetsu-roudou-jikan.mhlw.go.jp/kensetsu_overtime.html

つまり工数の可視化は、もはや「あれば便利な管理表」ではない。上限に達する前に段取りを変えるための、早期警報そのものだ。 だからこそ、月末に丸2日かけて集計する運用から抜け出す価値がある。


日報は毎日ある。なぜ工数だけ、月末に炎上するのか

日報自体は、ほぼ毎日上がってくる。それなのに工数集計が月末に炎上するのは、日報に「集まらない・揃わない・使えない」という3つの現実があるからだ。順番に見ていく。

第一に、集まらない。 元請・下請の関係で、各協力会社は自社流の日報を持っている。大手の設備会社は自社システムからExcelを出すが、個人事業主の職人は手書きメモやスマホのメッセージが日報代わりになる。提出のタイミングも形式もバラバラで、月末になって「あの会社の中旬がごっそり無い」と気づく。

第二に、揃わない。 やっと集まっても、ある会社は「鈴木 8:00-17:00」、別の会社は「各1人工」、別の職人は「半日」とだけ書く。時間表記と人工表記が混在し、工種名の呼び方も会社ごとに違う。この表記ゆれを人が手で揃えるのに、いちばん時間が溶ける。

第三に、使えない。 揃えた数字を、上限規制の早期警報や週休2日の検証に「すぐ使える形」にするには、もうひと手間いる。集計しただけのExcelは、眺めても誰が危ないかが浮かんでこない。

このうち、現場で口頭やメモでしか残らない情報を取りこぼさないことが、最初のボトルネックになりやすい。巡回中に職人から口頭で聞いた段取り変更や、走り書きのメモは、夕方には記憶があいまいになる。こうした「声と手書き」を後からテキストにしておくと、AIに渡せる入力の質が一段上がる。

現場の口頭メモを、その場で残しておきたいなら
移動や立ち話で出る「誰がどこで何を」を録音し、後から文字起こしまで一気通貫でできるICレコーダー型のデバイスもある。手書きが追いつかない現場では、音声を起点に日報の素材を集める選択肢として参考になる。
→ PLAUD NOTE(AIボイスレコーダー)を見てみる

3つの現実のうち「集まらない」は運用ルールで、「揃わない・使えない」はAIで詰められる。次から、揃える作業をAIに任せる線引きを決める。


AIに任せること、任せないこと——先に線を引く

ここで線引きを先に決めておく。AIに任せてよいのは「揃える(正規化)」と「数える(集計の下書き)」まで。労務上の判断と、報告に使う数字の最終確定は人がやる。 この順番を守らないと、便利さと引き換えに大きな事故を抱え込む。

理由は、上限規制や賃金に関わる数字は、間違えたときの責任が現場ではなく会社・労働者に及ぶからだ。たとえば「この職人は特別条項に達したか」「この時間外は割増の対象か」は、AIに体裁を整えさせる対象ではなく、就業規則と36協定に照らして人が判断する領域だ。

線引きは、工程と判断ごとに「担い手」を決めると迷わない。下の表で、AIに任せる工程と、人が握る判断を分けて並べる。

日報をめぐる工程・判断 担い手 なぜそう分けるか
口頭・手書きのメモをテキストに起こす AI(人が確認) 素材集めの補助。事実の確定は人
バラバラな表記を統一フォーマットに揃える AI 正規化はAIがいちばん得意
工種別・人別の合計を出す AI(人が検算) あくまで集計の下書き
「上限に達したか」「割増の要否」の判定 就業規則・36協定に照らす労務判断
36協定の届出・賃金台帳への確定値 間違いの責任が会社・労働者に及ぶ
安全・品質に関わる現場判断 工数とは別領域(別記事で扱う)

表を縦に見ると、境界がはっきりする。上の3行は「整える作業」でAIが主役、下の3行は「決める作業」で人が主役だ。判断の重い行ほど、人の側に置いてある。

このうち安全・品質に関わる現場判断は、工数の集計とは切り離して考えたい。危険かどうかをAIに言わせない線引きは、安全パトロールの記録をAIに任せる範囲の記事で別途整理している。工数集計でいえば、AIに渡すのはあくまで日報という素材であって、上限規制に関わる最終判断まで明け渡すわけではない。

線引きが決まったら、揃える作業の具体的なプロンプトに入る。


バラバラ日報を工種別・人別の工数表に揃える——2段プロンプトの使い方

ここからが本題だ。「集める→揃える→使う」のうち、揃える工程をAIに代行させる。 ポイントは、1つのプロンプトで全部やらせないこと。まず統一フォーマットに正規化し、その出力を人が一度見てから、集計に進む。段を分けると、どこで間違えたかが追いやすい。

バラバラな日報(Excel・FAX・LINE・手書きメモ)をAIで正規化し、工種別・人別の工数表に変換する流れを左から右へ示した処理フロー図

ステップ1:揃える(正規化プロンプト)

各社・各職人の日報テキストを、まとめてこのプロンプトに貼り付ける。狙いは、表記ゆれを吸収して1枚の表に変換し、あいまいな行に「要確認」を付けさせることだ。

あなたは建設現場の作業日報を正規化する担当です。
複数の協力会社から異なる形式で届いた日報テキストを読み取り、
統一フォーマットの表に変換してください。

# 入力(このあとに貼り付けます)
- 現場名:[現場名]
- 対象期間:[YYYY/MM/DD〜YYYY/MM/DD]
- 工種カテゴリ:[躯体, 設備配管, 電気, 内装, 外壁 など自現場の一覧]
- 人工換算:1人工=8時間、半日=0.5(指定なければこれを使う)

# やること
1. 日報を1件ずつに分け、各件から以下を抽出する
   日付 / 会社名 / 作業者名 / 工種 / 作業内容(30字以内) / 人工数
2. 日付はYYYY/MM/DDに統一。工種は上記カテゴリの中から最も近いものに寄せる
3. 時間表記(8:00-17:00 休憩1h など)は人工換算して人工数にする
4. 次に当てはまる行に「要確認」と理由を付ける
   ・必須項目(日付・会社・工種・人工数)が欠けている
   ・人工数が0以下、または1人あたり1日3人工を超える等の異常値
   ・対象期間の外の日付

# 出力
| 日付 | 会社名 | 作業者名 | 工種 | 作業内容 | 人工数 | 要確認 |
の表で出す。表の下に「処理件数 / 要確認件数 / 迷った割り当て」を箇条書きで添える。

# 禁止
- 書いていない項目を推測で埋めない(不明は「要確認」と書く)
- 人工数が無い行を0で埋めない(「要確認:人工数なし」とする)

このプロンプトの肝は、最後の「禁止」だ。AIは空欄を埋めたがるので、埋めさせない指示を明示する。 出てきた表の「要確認」行だけを、人が各社に照会すればよい。

ステップ2:数える(集計プロンプト)

正規化した表を人が確認したら、次のプロンプトで工種別・人別に集計させる。ここでは、上限規制に効かせるために「人別の合計」を必ず出させるのが、旧来の工種別集計と違う点だ。

次の正規化済みの工数表を集計してください。

# 入力:上で確認済みの表(日付/会社/作業者/工種/作業内容/人工数)

# 出力
1. 工種別の合計人工数(小数第1位まで)
2. 作業者別の合計人工数(多い順)※上限規制の確認に使うため必須
3. 会社別・日別の合計(ざっくり傾向把握用)

# ルール
- 「要確認」行は集計に入れず、除外した一覧を末尾に出す
- 主観的な評価(順調/遅れ など)は書かない。数値と事実だけ
- これは下書きです。最終の数値は人が検算する前提で出力する

2段に分けたことで、揃える失敗と数える失敗を切り分けられる。プロンプトの細かな書き方そのものに不安があれば、AI操作の型を体系的に学んでおくと、自現場に合わせた調整が速くなる。

AIへの指示の出し方を、体系的に身につけたいなら
プロンプト設計や業務での生成AI活用を、講座でまとめて学ぶ手もある。現場の合間に少しずつ進められる。
→ UdemyのAI・ChatGPT活用講座を見てみる

集計の下書きまで出たら、いよいよ「使う」段に進む。集めて数えただけでは、まだ事務の効率化で止まっている。


集計した工数を、労務・CCUS・週休2日・原価へどう使うか

ここが、本記事がいちばん伝えたいところだ。工数の表は、4つの実務に同時に効く。 集計をゴールにせず、出口を4つ持っておくと、同じ手間が一気に意味を持つ。

中央の「工種別・人別 工数表」から、36協定/週休2日(4週8閉所)/CCUS就業履歴/原価・見積精度の4方向へ矢印が伸びる関係図

第一の出口は、上限規制の早期警報だ。 人別の月合計を見れば、誰が45時間・80時間の水準に近いかが月の途中で見える。来月の配置で平準化するか、特別条項の手続きを踏むかを、手遅れになる前に判断できる。

第二の出口は、週休2日(4週8閉所)の検証だ。 国土交通省は建設現場の週休2日を進めており、4週8閉所などの取組を示している。日別の稼働を集計しておくと、「閉所予定日に動いていないか」を後から確認できる。

出典:国土交通省「週休2日の取組」
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000041.html

第三の出口は、CCUS(建設キャリアアップシステム)だ。 CCUSは技能者の就業履歴や能力評価を蓄積する仕組みで、国土交通省が能力評価制度を運用している。誰がどの現場で何人工従事したかを社内で整理しておくと、就業履歴の登録や確認の裏取りに役立つ。

出典:国土交通省「建設キャリアアップシステム 能力評価制度」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_fr2_000040.html

第四の出口は、原価と見積の精度だ。 工種別の実績人工が積み上がれば、次の見積で「この工種は計画より実績が多かった」と振り返れる。下請への発注内容と実績の突き合わせにもつながり、契約と実態のズレに早く気づける。下請契約のチェックは下請契約の確認をAIで下書きする記事も参考になる。

なお、こうした人手不足と長時間労働の背景は、業界全体の構造でもある。国土交通省の参考資料集では、建設業就業者数や高齢化の状況が整理されている。

出典:国土交通省「建設業を巡る参考資料集(令和8年4月)」
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001994097.pdf
※統計値は更新されます。最新の数値は資料でご確認ください。

4つの出口を意識すると、月末の集計は「やらされ仕事」から「打ち手の材料づくり」に変わる。ただし、その材料の数字が間違っていては逆効果だ。最後に検算の話をする。


最後に電卓を叩くのは人——36協定に使う数字だから

正規化も集計もAIに任せた。それでも、表に並んだ合計値を、最後に人が叩き直す工程だけは省いてはいけない。 ここはAIの便利さがそのまま落とし穴になる。

理由は単純で、生成AIはテキストを揃えるのは得意でも、桁の多い足し算や割り算で取りこぼすことがあるからだ。そして工数の合計は、上限規制の判断や賃金台帳に流れる数字でもある。間違いがそのまま36協定の判断材料になれば、現場の便利さでは取り返せない。

検算は、難しいことをするわけではない。次の3点を、出力のたびに人が確かめるだけでいい。

  • 件数の照合:入力した日報の件数と、表の行数が合っているか。AIが区切りを誤認して、行が増減していないか
  • 合計の再計算:人別・工種別の合計を、ExcelのSUMか電卓でもう一度足す。AIの合計と一致するか
  • 異常値の目視:1人あたり1日3人工超など、現実にあり得ない値が紛れていないか

この検算は、安全パトロールでAIに「危険でない」と言わせない確認とは性格が違う。あちらは人命に関わる「判断」を守る話だが、こちらは報告に流れる「数字」を守る話だ。守る対象は違うが、最終責任を人が握るという一点は共通している。 AIが出すのはいつも下書きで、確定させるのは人だと割り切る。

検算まで終えて、はじめて工程会議の資料に載せられる。ここまでが、AIに任せる範囲の全体像だ。


まとめ:工数の可視化は、2024年問題への現場の備えになる

建設現場の工数集計は、「集まらない・揃わない・使えない」の3つでつまずく。本記事は、このうち揃える・数える工程をAIに代行させ、出てきた表を上限規制・週休2日・CCUS・原価という4つの出口へ流す道筋を示した。

大切なのは、これを事務の時短で終わらせないことだ。人別の工数が月の途中で見えれば、誰が上限に近いかを手遅れになる前に知れる。 それは2024年問題への、現場でできる地に足のついた備えになる。一方で、労務判断と最終の数字は人が握る。AIは揃える係であって、決める係ではない。

中小の現場でこうしたAI活用をどこから始めるか迷うなら、まずは中小製造業のDXの始め方の記事で全体像をつかむのもよい。

今週できること:

  1. 直近1週間分の日報を2〜3社ぶん集め、上の正規化プロンプトに貼って動きを確かめる
  2. 出てきた表で「人別の合計」を出し、上限規制の水準に近い人がいないか目視する
  3. 合計をExcelか電卓で検算し、自現場の工種カテゴリにプロンプトを合わせる

本記事で紹介したプロンプトは参考情報です。業務に適用する前に、自環境での動作確認と内容の確認を必ず行ってください。時間外労働の上限規制・36協定・賃金など労務の判断は、就業規則や協定に照らして人が行い、必要に応じて社会保険労務士など専門家にご相談ください。数値の正確性は人による検算で担保してください。

AI

jitsumuai / jitsumuai.com 運営者

プロフィールを見る →

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です